璧を完うす(へきをまっとうす) 別館

日本人の良き精神、大和魂という璧(宝物)を損なうことなく次の世代へ完うしたい!そんな願いを込めたブログです。

日本とチベットの縁

チベットの伝承にこんな話がある。 「大昔、チベットの賢くて美しい500人の少年少女が薬草を求めて東方へ行き、海を渡って島に上陸し、そこにリビン(日本)という国を築いた。」 チベットでは良く知られている話で、チベットの人たちの日本への親近感のルーツとなっている。 歴史上、日本とチベットはあまり接点がなく、関連が少ないように思われているが、風俗や文化などに意外な共通点(数の数え方、おんぶの仕方など)があり、太古の時代何らかの強いつながりがあったことをうかがわせる。 この伝承もそのあたりから生まれ、伝えられてきたのかもしれない。 現在のチベットからは想像しにくいが、8世紀から9世紀のチベットは軍事大国であった。 当時チベットは「吐蕃王朝」の時代。 吐蕃の軍事的圧迫を感じていた唐王朝は懐柔のため、2度、公主(皇帝の娘)を吐蕃王の后として送り出しているくらいだ。 その頃の話としてこんな逸話がある。 753年正月、唐の玄宗朝貢した諸国の席次に、日本の大伴古麻呂が異議を唱えた。 吐蕃が西の一番、新羅が東の一番で日本は西の二番だったためである。 本来西側には中国から見て西方の国が、東側には東方の国が並ぶはずなのだが、一応日本に気を使って新羅の下にはおかなかったのだろう。 大伴古麻呂曰く「新羅は古来から日本に朝貢しているのだから、新羅より下座であることは納得できない」 この抗議を唐側は入れて、東の一番に日本、西の二番に新羅をおくこととしたそうである。(続日本記) いずれにしても西の一番は揺るぎもなく吐蕃チベット)で、誰も異議がない。 東アジアの大国として吐蕃王朝の地位は唐以外に比肩するものがなかった。 この十年後には唐の都「長安」を軍事占領するほどの力を持っていたのである。 その後幾度かの戦いのあと、吐蕃と唐は盟約を結び(822年)、碑が建てられた。(唐蕃会盟碑) その碑は両国の国号や君主の称号を列挙する際の表現など、両国に上下をつけぬよう配慮された表現となっている。 古来からこれほど確固たる地位を有していた国が中国の一部だろうか?否である。 唐との和平がなった後、仏教を国教に据えそれが現在まで続いている。 現在では仏教のもっとも純粋な姿を残しているのがチベットであるといわれる。 仏教は人々の生活に深く根ざし、価値観の基盤となってる。 チベットの人々は、日本を仏教国と考え親近感を持っているようだ。 また、中国の敵は味方と考えてもいるのだろうか?親日的である。 東アジアの外交関係は中国を中心とした冊封体制である。 冊封体制では時々の中国王朝は国際関係上、盟主として立てられるが、各々の内政にまで干渉することはまれである。 清朝の時代になると、ムガール帝国と日本を除く東アジアのすべての国が冊封体制に組み込まれていたが、それらの国々も中国の属国とは必ずしもいえない。 朝鮮やベトナムのように中国の強い影響下におかれていた国もあるが、チベットは有史以来完全に独立国である。 近代のチベットは、清朝、インドに進出したイギリス、南下するロシアの狭間で外交的に難しい舵取りを強いられた。 そんな中で日中戦争第二次世界大戦では中立を守り通したのである。 日本軍がビルマに進駐し、米英の蒋援ルート(重慶にいた中国蒋介石への物資補給ルート)が遮断されると、米英中はチベット経由での物資輸送を打診したが、チベット政府はこれを断固拒否した。 親日的というだけでなく、中国へ力を貸すことへの拒否感や、一方に肩入れし、賭けに負けたときを心配などが理由かもしれないが、日本としてはビルマ進駐の戦略的意義を失わずに済んだのである。 しかし、この判断が後にチベットを苦しめることになる。 第二次世界大戦終結後、中立を守ったチベットは、戦勝国はもちろん、準戦勝国にもなれず、戦後の枠組みを決める場面から取り残された。 それらの席でチベットの独立を国際的に認知させられたかもしれなかったのに、である。 第二次世界大戦後、民族自決の名の下にアジア、アフリカの多くの民族が主に西欧諸国から独立した。 しかし、時代に逆行するかのように、1950年9月、「解放」の名の下に中国共産党チベットに軍事侵攻し、チベットの独立は失われた。 戦後、独立を失った国はチベットのみである。 その後現在まで、中国共産党によるチベット人に対する人権侵害と抑圧・拷問・虐殺の繰り返しだ。 中国が都合よく持ち出した、かつての冊封関係の鎖にチベットの人々だけが未だに繋がれている。 このくびきを解き放つ手助けを、今こそ日本はしなければならない。 日本は借りを返すときではないのか? Flag_of_Tibet_svg.png
雪山獅子旗チベット亡命政府の国旗) 人気ブログランキングへ 人気ブログランキングへ 参考文献 チベット入門 ペマ・ギャルポ著 日中出版 日本人の目から見たチベット通史 小松原 弘著 東京図書出版会 チベット史 ロラン・デエ著 春秋社